Subject   : 宇宙線(cosmic rays)

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 宇宙線(cosmic rays)
 宇宙空間に存在する高エネルギー放射線、およびそれらが地球大気に入射してつくる放射線。前者を1次宇宙線、後者を2次宇宙線という。

1次宇宙線で観測されるエネルギーE は1020eVにおよぶが、ふつうは108eV程度以上のものをいう。E が109eV以上の宇宙線の全強度(粒子の密度)は約10-1/cm2・s・srである。積分スペクトルは指数関数E -αで表わされ、αの値は1.5〜2.0である。主成分は陽子で、これを100とすると、約10の重1次線、1程度の電子、0.01以下のγ線を含む。重1次線の組成は宇宙の元素存在とほぼ似ているが、リチウム、ベリリウム、ホウ素が多く、またやや重い元素に富む。惑星間空間では、荷電粒子成分が太陽風によって影響を受けるので、1次線強度には、太陽日の1日、27日、および11年を周期とする変動と、地球嵐にともなう変化(宇宙線嵐ともいう)のような非周期的変化が現われる。地球の磁気圏に入ると、荷電粒子成分が地磁気の作用を受け、磁気緯度の低い地方ほど入射強度が減少し(緯度効果)、正電荷成分は西方から、負電荷成分は東方からの入射強度の方が大きくなる(東西効果)。大気中では、中間子発生をともなう空気の原子核との衝突、中間子発生をともなわない核破壊、中間子の崩壊、カスケードシャワーおよびイオン化作用などがおこる。

 この過程で生じた2次宇宙線の強度あ、地上15〜20kmに極大をもち、以後地表に近づくに従って減少する。地表での荷電粒子の鉛直強度は約10-2/cm2・s・srで、組成は約3/4がミューオン、約1/4が電子(陽電子を含む)である。他に低エネルギーのN粒子も含まれ、おもに中性子であって、14N(n,p)14Cなどの反応で14Cそのほかの放射性核種をつくる。鉛の約10cmを透過できる成分を硬成分といい、おもにミューオンで、少数のN粒子も含まれる。また透過できずに吸収される成分を軟成分といい、おもに電子(および陽電子)、光子で、少数の低エネルギー中間子も含まれる。大気の気温上昇がπ中間子の崩壊する高度でおこれば硬成分強度が増加し(正気温効果)、ミューオンの崩壊する高度でおこれば減少する(負気温効果)。気圧がますと強度は減少する(気圧効果)。高エネルギーの硬成分は地下深く侵入し、深さが水換算10kmの地底でもミューオンが検出される。宇宙線は1912年オーストリア生れのアメリカの物理学者へス(Hess, Victor Francis, 1883.6.24-1964.12.17)によってはじめて見出された。陽電子、中間子、Λ粒子をはじめ多くの素粒子は2次宇宙線の中ではじめて発見され、素粒子物理学の発展に寄与した。ヘスは1936年度のノーベル物理学賞を受賞した。


 ⇒ プレートテクトニクス(plate tectonics)

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