Subject   : スペックル雑音(speckle noise)

カテゴリー : 技術 > 


 スペックル雑音(speckle noise)
 SAR画像上で観察されるゴマ塩状のランダムな濃度のゆらぎ。光学で良く知られているスペックル(レーザのように干渉性の良い光が物体を透過したり、物体により散乱したときに生じる斑点模様)と同等のもので、 SAR画像を利用する上で大きな障害の一つ。  スペックルは、波長は同一であるが位相が互いにランダムに異なるような波が多数重なり合う場合に生じ、コヒーレントな像生成システムに特有のものである。 SARの場合、画像上の1画素の濃度値は、その画素に対応する地表面上の 1空間分解能の面積からの散乱波の電力に比例する。  その散乱波は、面積内に散在する多数の散乱点からの散乱波のコヒーレントな和として受信・検出されるため、スペックルが発生するのである。コヒーレントな受信はSARを成立させる原理そのものであるため、スペックルは原理的に避けられない。

 スペックルの統計はすでに良く知られており、強度(濃度値)は指数分布に従い、空間的な広がり(相関距離)は空間分解能に等しい。スペックル雑音は乗法性(積)雑音であり、ゆらぎの振幅は局所領域の平均強度に比例する(指数分布では、ゆらぎの標準偏差は平均値に等しい)。

 実際のSARでは、スペックルを軽減するために、マルチルックという処理を施す。これは独立な観測値を平均するもので、空間分解能の犠牲の上になされる。平均する数がNの時、Nルックであるといい、Nルック画像ではゆらぎの標準偏差は になるが、空間分解能がN倍(面積について)になる。 SARの標準的な出力画像はルック数3ないし4として作られる。
 また、スペックル雑音を軽減するために、 SAR画像に対してスペックル雑音低減フィルタを適用することもある。これには、n×n画素の局所領域における濃度の平均値を局所領域中央の画素の出力濃度とする移動平均法や、選択的局所平均化(selective local averaging)などの手法があり、後者を応用すると(エッジ保存型平均化)平均化による画像のぼけをある程度押さえながら、スペックル雑音を低減させることができる。

 SAR画像の濃度値はσ゜に比例すると通常言われるが、正確には各画素の濃度値の期待値が、σ゜に比例している。各画素の実際の濃度値は、スペックルのために確率変数となっており、 1画素の値だけからσ゜を正確に推定することはできない。均質と見なせる広い面積(数百ピクセル)について平均できれば、 σ゜を1dB程度の精度で推定することが可能である。
 ⇒ 

[メニューへ戻る]  [HOMEへ戻る]  [前のページに戻る] inserted by FC2 system